社説:首相と安倍氏 不毛な攻防
繰り返すな
毎日新聞 2012年11月01日 02時32分
野田佳彦首相の所信表明演説に対する各党代表質問が始まった。自民党の安倍晋三総裁が年内の衆院解散の確約を求めたのに対し、首相は経済対策や赤字国債を発行するための特例公債法案成立などの環境整備を説き、すれ違いに終わった。
首相と安倍氏がまずなすべきことは違憲状態にある衆院「1票の格差」是正と特例公債法案の処理だ。国会は序盤だが悠長に日程攻防を与野党が繰り広げている状況ではない。民主、自民両党は党首会談による同時決着を早急に探るべきだ。
総裁就任後初の論戦で安倍氏は持論である集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の変更などを主張、首相は「現時点で解釈を変えることはない」と応じた。次期衆院選に向け外交、内政にわたる2大政党による活発な政策論争に期待したい。
衆院解散と眼前の課題である「1票の格差」「特例公債法案」は腹の探り合いの域を出なかった。
安倍氏はこれら案件の決着を引き延ばしてきたのは首相側だと批判、「近いうちに」とする衆院解散の実行を迫った。首相は「条件が整えばきちっと自分の判断をする」と応じたが、月内にまとめる第2弾の経済対策も含め「やるべきことはやりぬく」とも強調、年内解散への慎重姿勢をにじませた。
首相が言う条件にしても特に衆院「1票の格差」是正は民主党の対応こそが問われている。同党はこれまで「0増5減」の先行処理に抵抗してきた。
首相が本気で懸案の決着を望むのであれば、早急に緊急是正に応じるよう党内調整を指示すべきだ。さもないと、やはり本音は自らが否定する「だらだらと延命を図る」ことだとみられよう。
特例公債法案の成立遅れも深刻な事態を来している。予算の執行抑制で地方交付税の11月分の支払いが延期される。財政力の弱い市町村の行政に混乱が生じかねない。
安倍氏も党首会談による諸懸案の同時決着を首相に迫るくらいの迫力があってしかるべきだ。代表質問でデフレ脱却を強調しても、こんな状況を放置したままでは説得力に乏しい。
代表質問では民主党が参院での首相の所信表明演説を拒否した自民党など野党の対応を批判する場面もあった。参院は代表質問にかわる「緊急質問」を検討しているというが、演説拒否で汚点を残した自覚が足りないのではないか。
新党結成に向け石原慎太郎東京都知事が正式に辞職するなど「第三極」結集を探る動きも急だ。解散に拘泥するあまり不毛な足の蹴り合いを演じることは民主、自民両党がともに沈み行く道である。
http://mainichi.jp/opinion/news/20121101k0000m070114000c.html