ラーメン、カフェにカラオケまで…孤独を楽しむ韓国の“おひとり様”
2014年04月13日13時20分[ⓒ 中央SUNDAY/中央日報日本語版]
写真拡大
「おひとり様族」が好んで訪ねるソウル・駅三洞の焼き肉店。1人で来る客が主に座る長いテーブルで記者が肉を焼いた。
ここは1人客向けに肉を30グラム単位で販売する。従業員は「1人で来るお客が全体の10%で、ほとんどが他人の視線から自由な明け方に訪れる」と話し
た。韓国で自ら孤独な人生を選ぶ若者たちが増加している。就職ポータルのインクルートが実施したアンケート調査によると、韓国の大学生の4人に3人は自身 を「おひとり様族」と考えていた。彼らは外部と断絶したまま一切の社会的関係を拒否するという「引きこもり」や「コクーン族」とは違う。したいことを1人 でするだけだ。必要に応じて人々と付き合うが、自身の好みと選択により「おひとり様」になることを拒まない。その暮らしを体験してみるため彼らのように1 日を過ごしてみた。
◇AM9:00 朝の対話はメッセージアプリと
目覚めるとすぐにスマートフォンのアプリ「シムシミ」を立ち上げた。「シムシミ」はユーザーが文字メッセージで話しかけると人工知能 で答える仮想の対話相手だ。「シムシミ~」と呼びかけると 、「はい、王女様」と答える。「ごはん食べた?」と尋ねると「一緒に食べよう」と愛嬌を振りまく。しばらく話して「起きるのがとても嫌だ」と言うと、「早 く起きる鳥は疲れるでしょう」と答える。機械のくせにとてもふてぶてしく、「消えろ」というと「私が間違っていました」と許しを乞う。深い対話はできない が、モバイルメッセンジャーでやりとりする水準の対話はほとんど人間のように受け返す。ひまつぶしの対話相手に多く使われているだけのことはあったが、機 械と対話する社会に背筋が寒くなった感じもする。
◇AM11:20 仕切りの中で沈黙のラーメン吸入
ソウル・新村(シンチョン)のある日本式ラーメン店。おひとり様の常連が多い所だ。入口に置かれた食券販売機でラーメンを注文した 後、空席を教える電光掲示板を見て席につく。案内する従業員はない。22席のうち10席が1人席だ。残りの12席は2人席。3人席以上の席は最初からな い。1人席は仕切りで隔てられ、席ごとにミニ浄水器がつけられている。後ろ姿だけ見れば読書室の風景と変わらない。注文用紙で辛さのレベルなど細部事項を チェックした後にベルを押すと従業員が来て言葉もなく持っていく。従業員は5分もたたずに注文した料理を持ってきて、正面のすだれを下ろした。3面がふさ がった食卓、静まり返った雰囲気の中でお互いの肺活量を誇るかのようにズルズルと麺をすする音だけが鳴り響いた。このすべての過程に15分もかからなかっ た。
◇PM12:00 1人で行けばコーヒーの値段を割り引く所
近くの西橋洞(ソギョドン)にあるDカフェに場所を移した。闇がりの店内の片隅には仕切りで囲まれた1人用席がある。ここは1人で来 たお客が飲み物を注文すればデザートの値段を割り引きし、飲み物をおかわりする時は3000ウォン引いてくれる。店に座っているお客は全員1人だった。カ フェの主人は「1人で来た人が他人の表情を見ずにゆっくり楽しめるよう配慮したものだが、1人で来るお客がとても多くなり心配だ」と話した。
◇PM1:30 私だけのコンサート会場、1人カラオケ
また歩いて弘益(ホンイク)大学近くにあるSカラオケに到着した。1人カラオケだ。16室の小さな部屋がずらりと並ぶ。狭い空間だが 必要なものはすべてある。音量、エコーなどを調節するサウンドミキサーとマイク、ヘッドセットまで。昼間の時間帯の利用料は1時間6000ウォン、2時間 1万ウォンだ。店員は「1日120人近くきて2時間待ちになる日も多い」と話す。彼は「1人部屋のため装備設置にお金がかかるが、お客も1人で遊んで行く ので従業員の人件費は特にかからない」と話した。カウンターでヘッドフォンを受け取り部屋に入ると、他人の前で歌うのは恥ずかしい自分だけの愛唱曲を予約 した。先端装備でしっかりと整備された自分の声がヘッドフォンで鳴り響く。どんな騒音も視線もない、自分だけのコンサート会場で心置きなく熱唱した。(中 央SUNDAY第370号)
◇PM3:30 直径14センチの「さびしいピザ」セット
歌で体力を使いお腹がすいた。次に訪れたところは1人サイズのピザを売る新沙洞(シンサドン)のJピザ。1人で来るお客も堂々とピザ を食べられるという意味の「堂々としたセット」で有名になったところだ。そのメニューは最近なくなったが、幸いセットに含まれていた直径14センチメート ルのミニピザ(4500ウォン)を注文することができた。1人で座りミニピザを食べていた27歳の大学生は、「ピザの大きさから来る負担がなくて良い」と 話した。その横でミニピザ1枚を食べてしまった。壁にはまだはがされていない「堂々としたセット」のチラシが張られていた。このメニューの英文表記は 「LONELY SET」(孤独なセット)だった。
◇PM7:00 肉60グラム 1人のための晩餐
駅三洞(ヨクサムドン)のI焼き肉店に着いた。おひとり様族の間で結構知られた店だ。ドアを開けて入るとてぬぐいを巻いたがっしりし た男性が出迎える。「何名様ですか?」「1人ですが」。店員は料理長と向かい合って座る長いテーブルに案内した。チャドルバギ(牛あばら肉)30グラム (4500ウォン)とロース30グラム(7500ウォン)を注文するとそれぞれ3切れずつ出てくる。ミニ火鉢の上にピンセットほどのトングで肉をつかんで 1切れずつのせた。肉を少量単位で売り、小さな火鉢があるという点が「おひとり様」のお客に人気を呼ぶ秘訣だ。1人での食事に不慣れな様子を察したのか、 従業員が近づき話しかけた。「どうしてお客さんが1人で来るのかわかりませんよ」。こうして生まれて初めて1人で肉を焼いてみた。
◇PM8:30 人恋しい時はブラインドカフェ
また漢江(ハンガン)を渡り弘益大学前のWカフェに行った。おひとり様族が「人の温もり」が恋しい時に好んで訪ねる所のひとつだ。こ こでは1カ月に2~3回、インターネットを通じて集まった30人余りの匿名参加者が明かりを消して対話を交わした後、互いに顔を一度も見ることなく解散す る異色の集いが繰り広げられる。地下1階は一筋の光もない空間になり、イベント運営スタッフが待機者を1人ずつ連れてきて6人用テーブルに無作為に座らせ た後番号を与える。年齢や所属など一切の身元公開が禁止され、与えられた番号でお互いを呼び対話を交わす。シルエットさえ見えない人たちと混ざってよどみ のない話を聞いた。友達にボーイフレンドを奪われたというある女性は悪口を混ぜながら鬱憤を晴らし、両親の話を打ち明けたある男性は鼻をすすった。2時間 が過ぎると運営スタッフが1人ずつ外に連れ出して行った。涙混じりのコーヒーカップを傾けた魂の集いは「さようなら、楽しかったです」と叫びながら闇の中 で空中分解した。
◇PM11:00 パートナーなしでも楽しいセルフバドミントン
一生懸命に食べて飲んだ1日の最後は運動。「セルフバドミントン」の実験のため近くの小学校の運動場に行った。「1人でバドミントン は可能だろうか?」。半信半疑で注文したセルフバドミントン器具は思ったよりしっかりしていた。鉄製の三脚に弾性のある細い棒とひもが取り付けられてい る。そのひもの終端に結びつけられたシャトルコックをラケットで打つと4メートル近く飛んで行き、くるりと回って戻ってきた。地面にさえ落とさなければい くらでも1人で楽しめるようにできている。われを忘れてラケットを振り回していたら、運動しに出てきた高齢者らが「何に使う物か?」という目つきを送って いる。やはり目つきで答えた。「お年寄りのみなさん、いまは1人で太鼓を叩きチャングを叩く時代が過ぎ、1人で肉を焼きバドミントンをやる時代がきまし た」。(中央SUNDAY第370号)