韓国ではクラスター回避よりも宗教心が大切 何かにすがらないと生きていけない(児玉愛子)
日刊ゲンダイDIGITAL 2022/01/15 06:30© 日刊ゲンダイDIGITAL 映画「声もなく」(C)2020 ACEMAKER MOVIEWORKS & LEWIS PICTURES & BROEDMACHINE & BROCCOLI PICTURES. All Rights Reserved.
【奇妙?単純? 韓流の方程式】#64
韓国ドラマのロケ地巡りをしている時に、財閥の人たちが住むような高台の高級住宅地からソウルの街を見下ろしたことがある。真っ先に目に飛び込んできたのが十字架の数々だった。後に韓国人から「韓国はクリスチャンが多い」と教わった。ドラマでも教会のシーンをよく見るし、芸能人にもクリスチャンは多い。
正月に神棚を拝み、神父の前で永遠の愛を誓い、ハロウィーンで仮装をして坊主にお経をあげてもらう“なんちゃって”が大多数の日本と違って、熱心に宗教活動をしている人が全人口の半数近くに上るというから驚きだ。理由を聞くとさまざまな答えが返ってくるが、その多くが「景気も悪く、何かにすがらないと生きていけない人が多い」というものだった。
今月21日から日本で公開される韓国映画「声もなく」では、犯罪組織の末端にいる男が敬虔(けいけん)なクリスチャンだった。脚の不自由な中年男と口の利けない青年は死体の清掃係をして生計を立てている。
中年男は宗教心を持ち、「与えられた仕事に感謝しろ」と青年に言う。死体処理のための着替えのシーンでは壁にこう書かれている。「誠実に流した汗が、明日の笑顔に」。まるでコメディーだが、2人は意図せず誘拐犯になってしまい、信じていた神からも見放されてしまう。
今は若者たちの脱宗教が加速し、宗教人口は減少傾向にあるというが、その一方で「サイビ」と呼ばれるカルト的な異端宗教がたびたび問題となっている。
2年前、新型コロナウイルスが感染拡大する中、韓国で初めて大規模なクラスター感染を引き起こしたのは宗教団体の礼拝だった。大邱(テグ)の新興宗教団体「新天地イエス教会」がコロナ感染の温床になり、感染者が一気に2000人を超えたのだ。名の知れた宗教団体でもないのに信者数は20万人といわれ、多くの国民を驚かせていた。結局、宗教団体のトップは逮捕されたが、それ以後、韓国ではコロナと宗教がまるでセットのように報じられるようになった。
韓国政府は防疫のために集会や礼拝といった宗教活動の一部を禁止したが、信者たちは聞く耳を持たない。宗教団体の指導者の教えには従っても、政府の要請には非協力的でワクチン接種を拒むケースも。これには韓国人女性も憤る。
「本当に理解に苦しむ。宗教を心のよりどころにするのは分かるけど、コロナに感染して死んだら元も子もないのに」
ちなみに、映画「声もなく」に用意されたラストはあまりに残酷で言葉を失う。いくら神に祈ったところで救いがなさすぎる。
(児玉愛子/韓国コラムニスト)
感情的で生きるのが苦しい生活が、韓国人を宗教に追いやるようだ・・・