【コラム】インドネシアに逆転される韓国
立候補者の懸垂幕だけがはためいているインドネシア・バリ州の街頭の光景はぎこちない感じがした。イスラム教徒が全人口の87%を占 めるイスラム教国の一部でありながら、自分のカースト(階級)を運命として受け入れるヒンズー教徒が大多数を占めるリゾートの島に、第7代大統領を選ぶ選 挙(今月9日)の2日前まで1週間滞在したが、拡声器を使った遊説もなければ、支持集会が開かれることもなかった。
ジャワ 島の小都市で大工の息子として生まれたジョコ・ウィドド・ジャカルタ州知事と、スハルト元大統領(1921-2008)の娘婿だったプラボウォ・スビアン ト予備役中将の対決について、ジャカルタに駐在する韓国の商社マンは「改革を叫ぶ清廉派と、安定を掲げる復古派の勝負」と表現した。プラボウォ候補は「イ ンドネシアはまだ民主化の準備ができていない」「前政権が進めた改革の功罪について細かく検証していく」と訴えてきた。米国共和党の選挙運動専門家まで起 用して、対立候補を攻略した。2億5000万人の国民が1万7000の島々に散らばっている群島国家であるため、公式な選挙結果の発表も、投票日から13 日後の22日に予定されている。
プラボウォ候補が辛勝を収めるという、現地の世論調査会社による信頼度の低い調査結果とは 異なり、中間集計ではジョコ・ウィドド候補の逆転勝利を予告している。人口規模で見ると世界第3の民主主義国家であるインドネシアの有権者たちは、民族主 義者を標榜するプラボウォ候補ではなく、市長や州知事として着実に改革を進めたジョコ・ウィドド候補を選んだ、と外国メディアは報じた。その上で、プラボ ウォ候補が選挙結果を不服とする可能性にも言及した。
インドネシアは300年以上にわたってオランダの植民地支配を受けた ほか、ポルトガルや日本に支配されたこともある。イスラム教が伝わる前は仏教やヒンズー教が盛んだった多宗教社会である上、数百もの民族や言語が共存して いる。「多様性の中の統一」を国家の理念としているのは、このような歴史・文化的な背景があるからだ。スハルト氏が首相や大統領として長期間 (1966-98年)権力の座にあったのも、多様な文化を有する社会が希求した統一性の産物だ。
米国の著述家で科学者でも あるエリザベス・ピサニ氏は、ニューヨーク・タイムズに寄稿した記事で、今回のインドネシア大統領選の結果について「インドネシアの有権者たちが、雇用や 官給品の契約を家族や友人に独占させて王のように振る舞う高官たちに対し、票をもって復讐するやり方を体得した」と説明した。インドネシアのような多民 族・多文化・多宗教社会の下で、スハルト式の鉄拳統治が必要だという復古論者もいまだ少なくないが、歴史上2度目となる大統領の直接選挙で、民主主義の成 熟度が立証されたというわけだ。
国内総生産(GDP)基準で世界15位の韓国は、現在の経済成長のペースから考えると、 11年後には一つ下の資源大国・インドネシアに逆転されるとの予測が出た。最近、閣僚に任命の過程で疑惑や偽証、指名の撤回、辞退といった問題が噴出し、 それに伴って混乱が生じたところを見ると、経済だけでなく、韓国がインドネシアに逆転を許す分野がほかにも出てくるのではないか、という不吉な予感がして ならない。