朝鮮半島が大きく動いている
「アジアのバルカン半島=朝鮮半島」仮説
「歴史のターニングポイント(転換点)」は、何もソ連崩壊のような大きなイベントだけとは限りません。あとから振り返ってみれば、「あの小さなイベントが大きな潮流の変化をもたらしたのだ」、と思えるようなイベントは、意外とたくさんあるのかもしれません。
とくに、歴史を見ると、「強国に挟まれた弱小国」では、突発的に世界情勢の大混乱をもたらすことがあります。その典型例がバルカン半島です。
現在のバルカン半島(赤丸のあたり)
バルカン半島は、現 在の国でいえば、ギリシャ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、マケドニア、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア、スロヴェニアなどの国々から構成されています。しかし、第一次世界大戦直前は、オーストリア・ハンガリー帝国とオスマントルコ帝国という大国に挟まれ、小国が乱立していました。
第一次世界大戦直前のバルカン半島(赤丸のあたり)
1914年6月28日に、オーストリア帝国の皇太子夫妻が、当時はオーストリア領だったサラエボを視察中に、セルビア人青年によって暗殺された事件が発生しました(いわゆるサラエボ事件)。
これを契機にオーストリア政府はバルカン半島の小国・セルビアに対して最後通牒を突きつけたうえで軍事侵攻。しかし、オーストリアとセルビアの2ヵ国の戦争に留まらず、当時の列強が相互に結んでいた同盟関係から、欧州諸国がのきなみ戦争に巻き込まれたというものです。
こうした当時のバルカン半島の情勢と、非常によく似ているのが、現代の朝鮮半島ではないでしょうか。
朝鮮半島は南北あわせても人口は7千万人で、韓国側は1人当たりGDP(ドル換算)で日本とほぼ肩を並べているものの、南北単純平均した1人当たりGDPは2万ドル台にまで急落します。正直、世界情勢に影響をもたらすほど重要な地域だと思われていないのが実情です。
しかし、それと同時に、朝鮮半島は貿易戦争で衝突する米中の最前線に位置していて、しかも、北朝鮮は核開発や拉致などに手を染める犯罪国家です。さらに、韓国は米国や日本と同じ自由民主主義国でありながら、いまや公然と米国を裏切り、北朝鮮を利するような行動を隠そうともしなくなりました。
ある意味で、朝鮮半島が世界の火薬庫になりつつあるように思えてならないのです。
朝鮮日報の気になる報道
むかしから、「事実は小説より奇なり」、といいます。
そして、「灯台下暗し」ともいいます。
最近、朝鮮半島情勢が急激に動いているという兆候が、実にたくさん出て来ています。しかし、朝鮮半島が日本から見て近すぎるためでしょうか、それとも長年、既得権にあぐらをかいていて取材力が落ちているためでしょうか、わが国のメディアは朝鮮半島情勢をあまり見ていない気がします。
このため、私自身は最近、わが国のメディアよりも、外国メディアのウェブサイトに目を通すことの方が多いような気がしますが、昨日は韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に、こんな記事を発見しました。
在日米軍基地、韓国人訪問時の確認手続きを厳格化(2018/10/16 11:05付 朝鮮日報日本語版より)
朝鮮日報によれば、韓国国民は今後、日本国内にある米軍基地に出入りする際には、「北朝鮮・中国・ロシア国民と同じレベルの特別な確認手続」を経なければならなくなったとしています。
どうして日本国内の話題なのに、韓国メディアがこれを報じているのでしょうか?「灯台下暗し」とは、まさにこのことをいうのでしょう。
それはさておき、朝鮮日報の報道を要約すると、だいたい次のとおりです(日本語表現については適宜整えています)。
- 米軍の機関紙「星条旗新聞」が15日付で報じた内容によれば、在日米軍が最近、韓国国籍保持者が在日米軍基地に出入りする際、日本国籍保持者にはない追加の審査を行うように定めた
- 世界各国に基地を置く米軍は、基地訪問者を国籍によって区分して出入りをコントロールしているが、今回韓国国籍保持者に課せられた追加審査は、「規制対象リスト」に掲載された、北朝鮮、中国、ロシア、イラン、アフガニスタンなどの50ヵ国の国籍保持者に義務付けられているものと同等のものだ
- 1ヵ月前までは、韓国国民も写真撮影などの簡単な確認手続で出入りすることができたが、最近になってこうした追加措置が導入された理由について、在日米軍はコメントを控えているが、韓国に対する米軍の認識の変化と関連があるとの見方がある
- 一方で、日本人の場合、韓国にある米軍基地に招待された場合は、パスポートチェックだけで出入り可能とされている
なるほど。朝鮮日報の報道が事実ならば、米国は韓国国籍保持者と日本国籍保持者を明確に区別し始めたということです。いまのところ、「韓国国民が米軍基地内で何らかの犯罪に及んだ」という事実を聞いたことはありませんが、確かにこの話題だけを見ると、実に不思議な気がします。
少しずつ特別扱いを止め始める日米
中国、ロシア、北朝鮮などの国籍保持者が在日米軍基地への出入りを制限されているのは、何となく理解できる気がします。もしかすると、過去にこれらの国の人間が、基地内の見取り図を作ったり、軍事機密情報を盗もうとしたり、あるいは盗聴器を仕掛けたり、といった悪さをしてきたのかもしれません。
しかし、これを韓国国籍保持者にまで適用したということは、少なくとも米軍から見て、韓国国籍保持者は潜在的に中国、ロシア、北朝鮮などの国籍保持者と同じことをやりかねない人が多数混じっている、と判断したという可能性は濃厚です。
こうした「特別扱い」を止めるという動きは、日米両国に広がっているように思えてなりません。
たとえば、『「普通の関係」に戸惑う韓国:観艦式で将軍旗、日本に逆ギレ』でも紹介したとおり、韓国が今月11日に主催した国際的な観艦式で、「秀吉と戦った将軍の旗」とやらを掲げたことを受けて、日本政府は外交ルートを通じて韓国政府に抗議したそうです。
ひと昔前の日本政府だと、「事なかれ主義外交」のためでしょうか、日本の外交官がこうした抗議をするとは考えられませんでした。しかし、今回は日本政府としてはいちいち韓国側に抗議したわけです(※余談ですが、これについて私は日本外交が良い意味で脱皮している証拠だと歓迎しています)。
それだけではありません。
『日韓共同宣言から20周年の節目に合わせたような徴用工訴訟』で紹介したとおり、韓国の裁判所は、1965年の日韓請求権協定を正面からひっくり返すような判決を下そうとしていますが、日本政府はもしこのような判決が下った場合には国際司法裁判所(ICJ)提訴も辞さない覚悟です。
また、韓国政府が日本製のステンレス棒鋼に関税を課している問題を巡り、日本政府が世界貿易機関(WTO)に対して韓国を提訴した事件(『「ステンレス条鋼WTO提訴」は日韓関係を根底から変える?』参照)なども、日本が韓国を「特別扱い」しなくなった証拠といえるかもしれません。
このように考えていくと、事実として、日米が少しずつ、しかし最近になって目に見えて、韓国に対する扱いを変えて来ているように思えてなりません。

